東京高等裁判所 昭和36年(ラ)611号 決定
原審の確定した事実によれば、相手方キヨコがその元使用人に与えたのは既に交換価値を失う程度に着古したボロの上着とズボン各一着であつたというのである。再抗告人はこれを民法第九百二十一条第一号にいわゆる相続財産の処分に該当しないとした原審の判断を非難するのであるが、前判示によれば右古着は使用に堪えないものではないにしても、もはや交換価値はないものというべきであり、その経済的価値は皆無といえないにしても、いわゆる一般的経済価格あるものの処分とはいえないから、前記規定の趣旨に照らせばかようなものの処分をもつてはいまだ単純承認とみなされるという効果を与えるに足りないと解するのが相当である。よつて右と同趣旨においてこれを前記規定にいわゆる相続財産の処分に該当しないとした原決定には所論の違法はなく、右再抗告人の主張も採用し難い。
(梶村 岡崎 安岡)